「誰がエリオット、いえその子を買ったの!?答えなさい!!」
「ひぇっ!」
「何だ?」
アンジェラによって買われた大量の荷物を持ちながら、デュランが自分用の装備を見ていると、奥の方からリースの怒鳴り声と男の悲鳴が聞こえてきた。
近くに行ってみると、なんとリースが一人の男を締め上げているところだった。どうも奴隷商人の様だった。
「い、いったい、な、なんなんだよ?」
「さぁ早く答えなさい!」
「あ、赤い目の男が買っていった・・・」
「赤い目の男・・・」
リースはその言葉を頭の中で反芻しているようだった。
すると、遠くから屈強な男たちが近づいてきた。きっとここの用心棒たちだろう。
「やばいな・・・」
デュランがつぶやくと、ホークアイが現れてリースを羽交い締めにした。
「なにやってるんだ!」
「離して!エリオットのことがわかりそうなの!!」
「だからって、ここで騒ぎを起こすのはまずいだろ!」
「でも!!」
「ちっ!恨み言はあとで聞いてやる」
そういってホークアイはリースの首に手刀をおろし、気絶させた。
そのまま二人は宿屋へと逃げていった。
デュランはその様子を呆然と見ていたが、アンジェラに急かされすぐに宿屋へと向かった。
宿屋に戻るとリースがみんなに頭を下げた。
「すみません。私のせいで・・・」
「それはいいけど、いったい何であんなことをしたんだ?」
デュランが訪ねるとリースは口ごもり、ホークアイの方を見た。
実を言えばこの助けを求めるという動作も、ホークアイに対してしか行わない。普段は話を聞いても、基本的には自分ですべてを決定している。
ホークアイはそんなリースのメッセージに肩をすくめ、
「いいんじゃないか?こいつらだったらローラントに不利になるようなことはしないだろう。少なくとも俺なんかよりは信用できる」
「!?あなたのことは十分信頼しています!」
「まぁ、とにかく話してやったら?」
「ん・・・そうですね」
ホークアイが再度言うと、リースは意を決してしゃべり出した。
「私にはエリオットという弟がいるんです。つまりローラントの第一王子のことですが、先の侵略でエリオットはナパールに捕まり、行方不明になってしまったんです。それでさっきの奴隷商人の話にエリオットに似た子供が出てきたもので・・・」
「そうだったの」
リースの言葉にアンジェラはうなずいた。アンジェラはローラントに一人幼い王子がいることを知っていたが、レジスタンス基地にはそれらしき子が見あたらなかったので不思議に思っていたのだった。
「まぁ、だったら仕方ないか。ところで目当ての物は見つかったのか?」
デュランの言葉にホークアイはうなずいて、
「ああ、これだ」
取り出されたのはおもちゃのようなハンマーだった。全体的に明るい色で金属製の要には見えない。殴る部分が蛇腹状になっていて殴られても全く痛くなさそうである。
「ホントにこれなんでちか〜?」
シャルロットが疑わしそうな声を出すと、ホークアイは無言でシャルロットの頭をそれで叩いた。
――ピコンッ!――
「きゃっ!」
――ぬぼぼぼぼぼぼぼっっ――
叩かれたシャルロットからいきなり黄色い煙が発生した。
「!!」
「な、なんでちかこれは〜〜〜〜!!」
煙がはれたところには手のひらサイズになったシャルロットがたたずんでいた。
「これでいいだろ?」
自慢げにホークアイが言うと、四人は目を輝かせて、
「へぇ〜おもしろいなぁ」
「ほんと!こんなモノがほんとにあったなんて知らなかったわ」
「これで、ドン・ペリ様に会えますね!!」
「モンスターにも、きくのかな」
と、それぞれそのハンマーの威力に感嘆した。
「ま、とにかく目当ての物は見つかったんだ。早いとこジャドに行こうぜ。コロボックルの村の場所は・・・」
早速ホークアイが次の目的地について話し始めているが、その足下では、
「はやくもどちて〜〜〜〜!!」
早くも忘れられそうになっているシャルロットが小さな声で叫んでいた。