「儂はあのとき歩き回っていた。だからどこにいるという問いには答えられなかったのじゃ」
あまりの屁理屈に六人は声を失った。
ちびっ子ハンマーのおかげで無事コロボックルの村に入り込んだ六人は、村の入り口にいた老コロボックルにドン・ペリの行方を聞いたのである。
そしてそのコロボックルの言うとおりに村中をかけずり回され、最後の最後に自分が賢者ドン・ペリと明かした。
そしてなぜ黙っていたかと聞くと、さっきのように返されたのだった。
デュランはその言葉に、一瞬我を忘れて剣を引き抜こうと柄に手をかけた。
「デュラン!おさえて!!」
アンジェラが横から手を伸ばしてデュランの腕に触れながらささやいた。
デュランはアンジェラの言葉に何とか怒りをこらえて、引きつりながらも笑いを顔に浮かべることに成功した。
「サ、サスガ、ドン・ペリ様、オメガ、タカイ・・・」
デュランがふるえながら引きつった笑顔で賞賛すると、ドン・ペリはとぼけた顔をして、
「おや、どうした。声が震えておるぞ?」
――ザンッッッッッッッ!――
デュランはこらえきれず剣を抜いた。
――ガッンッッッッッッ!!――
そこですかさずアンジェラが杖でデュランを殴り倒した。
突っ伏したデュランを横目に、リースはドン・ペリにローラントの現状についてお伺いをたてた。
「ふむ、ローラントのう・・・・そうじゃ、天かける道の途中に風の回廊と呼ばれる難所がある。そこの先に風のマナストーンとともに風の精霊ジンがいるはずじゃ。かの精霊の力を借り、眠りの花畑から眠りの花びらをローラント城に飛ばせば、みんな眠りこけてナパール兵など一網打尽じゃ」
さすが賢者と呼ばれる者だけあってその助言は非常にすばらしかった。デュランをのぞいた五人はその言葉にうなずき、コロボックル村をあとにした。
余談だが、デュランが気がついたのはそれから半日後で、持ち運びのために小さくされてアンジェラの荷物の中に放り込まれていたときだった。